改正保育制度施行の実態及び保育所の運営管理に関する調査研究報告書

 
3.構造改革関連
(8) 利用者からの苦情に対処する仕組みの準備はできているか(表No.6465
 問8の設問は、児童福祉施設最低基準の改正に伴い義務化された苦情情報システムについて、保育所の準備状況を調査したものである。
 「利用者からの苦情に対処する仕組みづくりの準備ができているか」という問いに対し、「準備ができている」と回答した保育所は45.1%、調査総数の半数弱である。この数値は全国の各地域共に大差はない。
 所在地区分別では、県庁所在市の公営保育所が60%の準備率で突出しているが、他の地区に差異はない。
 全国的には民営保育所の準備率が幾分高い傾向が見られた程度であった。

1.仕組みが作れないのはなぜか(表No.6667

 問8−1の設問は、問8で「準備ができていない」と回答した保育所を対象に、仕組みがつくれない理由を尋ねたものである。
 準備ができない理由について、以下に回答率の高い順に列記する。
1位 市町村当局の方針が定まっていない 42.6%(公営58.1%、民営24.9%)
2位 仕組みを作るガイドラインが示されていない 27.7%(公営23.3%、民営32.7%)
3位 地域の保育所と協議がすんでいない 13.7%(公営6.8%、民営21.6%)
4位 趣旨が理解できないので手の打ちようがない 8.2%(公営2.5%、民営14.7%)
    その他 14.5%(公営12.5%、民営16.7%)
    未回答 4.2%(公営3.9%、民営9.5%)

 第1位の「市町村当局の方針が定まっていない」は全体の半数弱を占めた。
 公営保育所は58%と半数強で、民営保育所24.9%の2倍と大差である。
 この現象が全国すべての地域、地区で見られ特徴的なものといえる。
 所在地区分別では、すべての地区で30%前後の公民営格差があった。公営のその数値は中都市、小都市Aで70%と高く、小都市B、町・村で55%、都区部・指定都市、県庁所在市が40%であった。
 公営保育所にとって、市町村の方針が定まらないまま新しい仕組みの準備を始めることはできないであろう。この時期当然の数値である。むしろ、市町村行政のとまどい、意識のレベルが伝わってくる数値と読むことができよう。
 また、準備ができていない理由の1位、2位、3位の数値を合計すると84%となり、84%の保育所が、市町村の方針やガイドラインや保育所仲間との協議といった外部からの指示を待っていることがわかる。
 各保育所が主体的に、積極的に取り組めるテーマではないことを顕わしているともいえる。
 第2位の「仕組みを作るガイドラインが示されていない」は、一部の地域を除いて、公民営差、地域差、所在地区分差も少なく、28%前後で平均的に選択されている。
 今回の福祉改革の主要テーマの一つである「保育所と利用者との対等な関係」という関係性が変化したことをリアルに伝える苦情解決の仕組みづくりは、保育所にとって全く新しい体験である。不安やとまどい、混乱を生じるのもごく自然の現象といえる。何らかのガイドラインを期待することも当然のことである。
 そうした背景を考える時、第2位の選択率が低すぎることは不自然とも思える。それは第1位の理由と同類に思えるからではないだろうか。
 1位と2位の数値を加算すると70%となり、7割の保育所が行政当局の方針やガイドラインが示されることを期待していたということになる。
 第3位の「地域の保育所と協議がすんでいない」の理由は、どの地区も15%の差で民営保育所が高率であることは特徴的である。
 初めての体験に対し、どまどいが多く、旧来からの護送船団方式、仲間と手をつないで同じ方針で運営する方式と、競争原理といわれる方式で自分で新しい仕組みをつくる勇気を持つこととの間で、自信なげな民間保育所の姿が見えてくる。
 第4位の「趣旨が理解できないので手の打ちようがない」は全体で8.2%とわずかな数値であるが、北海道・東北地区以外はすべての地域、地区において民営保育所が高率である。所在地区分別では、すべての民営が公営との差15〜20%であり、民営の独壇場である。数値が少ないが、民間保育所の強い意志、反骨精神を感じる。
 「趣旨が理解できない」に対して「趣旨を理解して主体的に動きたい」という積極的な意志にも取れる一方、「趣旨もわからないが、理解もしたくない、認めたくない」といった反発も感じられる。
 「その他」の理由は14.5%と3番目に多い理由である。その他に様々な理由があり、地域差もあるのであろうが、数値としては現れていない。ただ、都区部・指定都市の公営のみが44.4%と半数弱が「その他」を選択している。一つの方針でまとまっていたのであろうか。地域区分別では顕著な数値差は見られなかった。
 調査が行われたこの時期は、まだ多くの保育所で、苦情解決システムの趣旨が理解されておらず、「苦情」という表現に反応し、「苦情処理、苦情対応とは何事だ、保育所の努力を逆なでする不適切なことばである」と反論する意見や、利用者と保育所との健全な関係性を崩すことにならないかと危惧する意見などと騒がしいところであった。

(9) 第三者評価が保育事業に加えられることについて(表No.68−1269−12

 問9の設問は、第三者評価導入に関する保育所の意識を調査したものである。
 3つ以内の複数回答で得た結果を高率順に列記する。
 1位 信頼のおける評価基準と妥当な評定がなされる体制が望まれる 62.9%(公営64.5%、民営61.2%)
 2位 専門的な技量や倫理観が向上する機会となり保育を社会が支えるための仕組みであってほしい 58.9%(公営64.1%、民営53.4%)
 3位 監視的な仕組みになってほしくない 39.9%(公営41.7%、民営38.0%)
 4位 評価者に適確者や公正な人選がなされるか不安がある 39.8%(公営40.2%、民営39.4%)
 5位 第三者評価にたえられる保育でなければならない自負はもっている 23.0%(公営14.5%、民営32.0%)
 6位 第三者評価が成立するのかにも疑問で、違和感がある 15.6%(公営13.5%、民営17.9%)
 7位 閉鎖的、密室的だとの批判もあったのだから公開されるのは望ましいことである 13.6%(公営12.9%、民営14.4%)
 8位 保育現場へ第三者が入ること自体に抵抗がある 7.0%(公営4.2%、民営9.9%)
 時期的に、第三者評価導入に関する情報が各保育所にどの程度届いているのか、調査者サイドとしては不安であった。しかし、選択項目の内容が具体的で理解しやすかったこともよかったであろう。比較的肯定的な意見が上位を占めた。複数回答だったことも回答者の選択に無理がなくてよかったと思う。
 8つの選択項目は、第三者評価理解に役立つ内容で、回答者にとって第三者評価を受け入れやすい環境づくりの一助となったといえるものである。
 第1位の「信頼のおける評価基準と妥当な評定がなされる体制が望まれる」は、全国のすべての地域、すべての地区の公民差も少なく同率であった。保育所の多く(62.9%)が望んでいる事項であることがわかる。
 ただ、信頼のおける評価基準も妥当な評定も、理想は高く実現し難い課題でもある。今検討中の評価基準や評定方法について、今後も保育現場の意見を取り入れたり、現場の関係先が公開で討議できるような場が設けられるとよいのだが。調査の回答者の気持ちを裏切ることのないようにと願う。
 第2位の「専門的な技量や倫理観が向上する機会となり、保育を社会が支えるための仕組みであってほしい」も全国の58.9%の保育所が選択したものである。各地域で幾分公営が高率の傾向が見られるが、民営にとっては第三者評価に対する現実感が強く、この項は理想的すぎるように感じられた保育所もあったかもしれない。また3項目以内の選択であったため、第5位の「自分の保育を自負している」項を選択した民営との関係もあって、この項の民営保育所の選択率が低かったとも考えられる。
 第3位の「監視的な仕組みになってほしくない」は39.9%。公民差も少なく、全体の40%の保育所が選択している。
 この時期、第三者評価の基本的な考え方は一般に知られておらず、第三者評価の対象が不明であり、行政監査との違いがどのようになっているのか不安に思っている保育所は多かったであろう。
 各地域、各地区共に数値差は少なく、公民差では各地域ともに幾分公営高率の傾向が見られる程度である。
 第4位の「評価者の適格性や公正な人選がなされるかといった点不安がある」は第3位と同数の39.8%である。この項も第3位と同じく、第三者評価に対する不安材料を示したものである。数値も第3位と同数で地域差、公民差も少なく全国的な拡がりのある意見である。
 第5位「第三者評価にたえられる保育でなければならないし、自負はもっている」は23.0%、公営14.5%、民営32.0%と公民差は明確である。
 公民差が顕著な地域は、東海地区(公営7.7%<民営45.0%)、中国・四国地区(公営7.5%<民営36.5%)、九州地区(公営11.7%<民営31.2%)等、北海道・東北地区以外の地区はすべて民営が高率であった。
 所在地区分別でも地域区分別ほどの差異はないが、どの規模の都市、町村でも民営が公営の2倍前後の差で高率を示した。民営保育所の自負心の強さを明確に顕した項目であった。
 第6位「第三者評価が成立するのかにも疑問で違和感がある」は15.6%、全体の15%と少ない数値ではあるが、肯定的、積極的に受け止めようとする意識がある反面、疑問も残るといった選択項目である。
 第三者評価システムは、高齢福祉の世界が介護保険制度に転換したことがきっかけとなって発生した仕組みであると聞くことがある。この仕組みが子育てに関わる保育所の世界に馴染むものであるか疑問があるという関係者もいる。
 それでは、保育所の当事者はどのような意識かと問うたものであるが予想外に低率であった。地域差が少ないことも意外であった。
 第7位「閉鎖的、密室的だと批判もあったのだから公開されるのは望ましいことである」は13.6%。東海地区、中国・四国地区と小都市A、Bの公営が9.2%、6.3%と低く、公民差がある程度であとのすべての地域で同数値である。意識改革の進んだ保育所像が浮かんでくる。また民営の保育所の方が幾分意識が変わったといえる地域もある。
 第8位「保育現場へ第三者が入ること自体に抵抗がある」は7.0%、公営4.2%、民営9.9%とわずかな数値だが民営は公営の2倍である。都市規模や地域によって数値差は異なるが民営に抵抗感が強い。特に県庁所在市や、小都市A、B、町・村にその傾向が見られた。この調査が1、2年前に実施されたものであるなら、この項目はもっと高率で選択されたのではないだろうか。
 ここ1、2年の保育所の意識改革の大きさを実感する調査結果であった。

(猪股)




<< 戻る
| 目次へ | 次へ >>