地域に開かれた保育所の活動に関する調査研究報告書

II. 調査研究実施保育園の報告

3 住吉保育園 (栃木県 宇都宮市)

 中核市宇都宮市は、栃木県庁所在地であり、北関東にあって人口50万になろうとしています。しかし最近中心街の空洞化がクローズアップし、その対策として真剣な取り組みが叫ばれ実行に移す段階を迎えております。その中で住吉保育園は市中心部に位置し、昭和39年に社会福祉法人として設立。その使命達成を主眼とし、保育内容の充実に努力して参りました。
 少子高齢社会が到来し、家族の小規模化・核家族化に加えて地域の伝統的文化伝承活動も停滞し、昔から伝わる良き習慣も見失われつつあります。

《開かれた保育園とは》
 地域の子育て支援が叫ばれ、保育園はその地域の核となって使命を果たすと共に、地域に開かれた保育園として位置づけするためには、保育園が意識改革しつつ対応する事が必要であると思っています。
 “人は人によって育つ”と言われていますが、忘れてはいけない言葉であると思っています。少子化対策が遅々として進まない中で、限られた少ない子どもをよりよく育てなくてはなりません。それなのに現状は、幼児虐待、登校拒否、または暴走族問題などの報道が繰り返されています。今こそこれまでの実践を基として、地域の中での子育て支援、正しい子育てを真剣に考え、ボランティア精神で率先垂範し、体制作りに挑戦していく覚悟を決めなければなりません。100年後の国の存亡が今の子育てで決まるとも考えています。その意味で、強い危機感を持つと共に、今こそ私共が最大限の努力をする時であると考えています。

《当保育園として取り組み》
 開園以来 (昭和40年代) より今日まで行事を進めるに当り、地域の中に溶け込んで生活できるような保育をするように努力してきました。
 年度初めに保護者総会を開き、保育参観も一緒に実施し、全クラス午前9時より開始、11時30分までに参観と各クラス (5クラス) 保護者会役員を選出し、保護者会総会を開会し、保護者会長挨拶につづき、会計・監査報告を承認し、昼食をはさみながら今年度事業計画 (園行事、保護者会行事)・予算案を決め新役員の承認をしますが、保護者全員参加で実施しています。

−総会決定行事の中から地域に開かれた行事として− (抜粋)
世代間交流事業として
《七夕祭老人交流》7月4日(木)10時開会〜13時解散
 地区の老人クラブとの交流。年6回開催する内の一番初めの交流です。七夕祭の前日までに老人クラブの皆様をご案内して、当日の参加人員を把握します。昭和60年代より実施し、毎年の恒例事業になっています。30人前後のおじいちゃん・おばあちゃんが来園し、折紙や色紙に願い事を書いたりして、青竹に子ども達と一緒に飾り付けをします。空高く青竹が風に揺れ、子ども達が「キレイ、キレイ」と歓声を上げると、おじいちゃん・おばあちゃんもうれしそうです。
 部屋に入り、園児の歌・お遊戯・オペレッタ・合奏等0歳から年長児までの発表を観ていただくと、「可愛い!可愛い!」「よく覚えたね!」「上手くできている!」などの歓声が上がります。
 園長より日常の活動、年齢別の発達、子どもの様子、働く親の姿や考え方などを分かりやすく説明すると、「遠く離れた孫達の事を思い出したりして見ています」「励みになります」などと感謝の言葉を聞いています。
 願い事をするとお空のお星様が叶えて下さると信じていた昔の子ども、今の子どもと多少の違いはあっても夢を大切に育てていきたいと祈るような心で毎年実施している行事です。
(七夕祭りの献立として) 年長と敬老特別メニュー
ブリの照り焼き・豚肉の生姜焼き・かぼちゃの甘煮・いんげんの胡麻和え・ニラ玉汁・グリーンピースごはん・メロン・お土産も用意

《敬老会》9月15日(日)
 毎年9月15日に、富士見小学校の体育館で地区内の老人の参加で盛大に開かれており、保育園児4・5歳児が合奏などを披露して喜ばれてきましたが、昨年より地区別実施が決まり、住吉陽西自治会の主催となりました。保育園では、保育士全員が参加しベル演奏・昔の歌などで楽しい雰囲気作りをお手伝いし、地区老人と自治会役員の方より感謝されました。これも地区活動のひとつで、保育士には休日出勤として代休または賃金を払っています。

《運動会》9月29日(日) 7 : 00集合場所作り 9 : 00開会 14 : 00終了
 園庭が狭いため保育園近くのJTグランドにて開催します。広い運動場での運動会は、地域の皆様を来賓として招待し、子ども達の親や親戚、また卒園生にも案内して開催します。また、種目も保護者・卒園生・地区のお年寄りなどの競技を組み入れ皆で参加していただき、賞品もそれぞれに喜ばれるよう工夫します。お年寄りには昼食を用意、また、手作りのおはぎ・豚汁・おでん・果物で接待しています。

《交通安全交流》11月7日(木)住吉保育園ホール
 市交通対策課より婦警2名派遣で、地区の老人30人・園児3歳以上70人を対象に実施されました。
10時集合交通安全の紙芝居・パネルシアター・クイズ等
10時50分老人に対する交通安全について説明
11時30分会食・献立 (メカジキの竜田揚げ・肉じゃが・きんぴらごぼう・ほうれん草のごま和え・マカロニサラダ・わかめご飯・ニラ玉汁)
12時50分老人クラブにより手品の披露
13時20分解散子ども達がテラスに出て握手でお別れ
 交通ルールを楽しく学ぶ事ができ、老人だけの交通安全教室には参加が少なく、保育園での実施には積極的に参加してくれるとの事で、市当局や自治会より感謝されています。

《地区のクリスマス会》12月15日 (日) 約100人参加・保育士8人
 住吉地区自治会・子ども会・老人クラブ・婦人会・更正保護観察所下野尚徳有隣会・住吉保育園が地区全体のクリスマス会を下野尚徳有隣会会館で開催、保育士代表が参加した子ども達と交流を深め、エプロンシアター・パネルシアターを披露し大好評を得、新聞にも報道され、地区の要望に応えて日頃の保育の一部を披露する事ができ、好評でした。

異年齢・卒園児との交流
《宿泊保育》
 昭和40年代より毎年実施してきた宿泊保育は、年長児と卒園生の交流を通し卒園後の成長を確認し、大きくなった卒園児と父母の皆様との再会を喜びあってきました。年々参加者が多くなり小学校3年生までとしました。毎年7月に入ると小学3年生までと年長児にお便りを出し、実施日は、夏休みに入る7月20日過ぎの土曜・日曜日としています。
(宿泊保育実施事例)

 毎年苦労の多い行事ですが、年長さんの目の輝きと卒園生が大きく育った姿が見られ、保護者からの感謝の声をいただき、保育者としての喜びを心から感ずる事のできる行事です。

《夏祭り》
 園の行事として今まで園中心に賑やかに楽しく実施し、樽みこしや散歩車に太鼓を積み、花車を押し、お賽銭箱をかついで町内を廻っていましたが、最近は交通量が増え安全が守れないため中止となりました。しかし、昨年より宇都宮市の夏祭りの「よさこい踊り」に希望参加で、職員全員と保護者・園児・卒園生の有志がおそろいの衣装を着て宮まつりに乗り出しました。市全体に巻き込み、中心部は人で埋まり、大変な熱気に包まれた大通りで気勢をあげ、保育園の存在をアピールしました。

幼保小連携事業 平成13年度から実施
 栃木県教育委員会では、栃木県教育センターより全県呼びかけ、地区別単位による活動を始めました。宇都宮市は、文部科学省指定地域として研修会を開催し、その中で中学校区から小学校区と細分化して活動を始めました。
 平成14年度、富士見小学校として3施設(富士見小学校・中鶴田幼稚園・住吉保育園)が、幼保小連携事業として9月10日に富士見小学校にて開会。
 当日は、小学校校長・教頭・教務主任・担任 (5名)、幼稚園園長・主任・担任2名 (4名)、保育園園長・主任・担任2名 (4名)が年間計画を立て、小学1年の各クラスの授業を見学しました。全クラス共に楽しそうに落ち着いた雰囲気の中で授業が進んでいました。
 卒園後、約半年の経過を見せていただき、ホッとした気持ちになりました。

10月21日中鶴田幼稚園にて5歳児のクラス見学。
 あいにくの雨で、校庭での活動は見ることができませんでした。
 10時30分までにバスによる登園は、早く来る子と遅く来る子の受け入れば大変だと思いました。自由遊びの中で規則を守り、自主的に遊んだり、片付けなどもきちんとできる子がいたり、集団での学びの様子が見られました。30人に1人の教師のため教師の指導力と子どもの集中力など、1日の生活の流れが大変だろうと痛感しました。

11月27日 9 : 00〜12 : 00 住吉保育園公開保育
 コーナー遊びを中心に見ていただく。
 年長23名に保育士2名・年中24名に保育士2名
 コーナー(5)……「学くん (コンピュータ) 」・制作遊び・フレーベル恩物・楽器遊び・戸外遊び

 それぞれ遊びたい所を自分で選んで遊び、1時間30分の間に5つのコーナーを廻るしくみ。いつもは3歳児のクラスも加えるが、今回は場所の関係で不参加。コーナー遊びは、普段と変わらず楽しく遊べたようです。一人ひとりを視野に入れた保育をしていて、子どもが楽しそうでした。
 幼保小連携事業として、平成15年1月以降にも園児と小学生との交流会・反省会が計画されています。
〔感想〕
小学校……40 : 1担任は年度当初は無理と思われました。1年生は就学後の教育といっても個人差もあり、早・遅生まれの差は歴然としており、生活面では基本的生活習慣がやっと身についた段階、せめて30 : 1か複数担任制が望ましいと思いました。
幼稚園……登園時間があまりにも差があり過ぎると思いました。早い子は良いとしても10時30分集合は遅すぎて、学校生活との時間差を考える必要があると思いました。また、30 : 1の保育では、教師1人の力には限界があり補佐役(副担任)が必要と思いました。
保育園……早朝7時より夕方7時までの12時間開園の中での保育は、職員のチームワーク作りと保育内容の工夫によって集団としての生活は満たせるとは思われるが、個々の関わりに対して家庭のあり方が如何に大切であるかを痛感しています。パートの導入により、4歳・5歳児24〜25人を複数担任として個人差のある事を当り前の事と考え丁寧に対応しているが、家庭環境による差は埋める事が難しい。保育に欠ける子の保育は家庭・地域の協力なしにはできないと思われます。

《まとめ》
 子どもの成長にとって、環境を整える事が大切です。人的・物的、すべての環境作りは大人 (社会人) が作らなくてはならない人間としての務めであり、責任であると思います。
 地域を同じくして活動する事が、人として目覚め、人として努力する事に繋がると信じています。少子高齢社会を明るく生きるためには、より良い子育ての実現以外に道はないと考えています。

1. 事業への評価
 保育現場を考えると、保育園は入所者のみの子育て支援だけでは使命を果たしていると言えない時代と考えています。少子高齢社会の到来をどのように乗り切り、今後の明るい保育を作り出すかを考える時、きめの細かい保育対策を打ち出すために、保育園は地域と共によりよい子育てを支えていかなくてはなりません。若い人達が子育ての楽しさ・遊びを感ずる心のゆとりを知り、未来に夢を持てるような社会の実現を目指して努力する事が必要であると考えました。
(1)保護者……園児の保護者は両立支援対策で働く時間は確保されていると思うが、自分の子育てが大変で地域の子育てに協力する余裕はありません。また、行事に参加している保護者はもっと保育園を利用したいと考えているようです。
(2)地域社会……地域の中には色々な方がいて働きかけによってはお手伝いをしてくださる方もいるが、責任問題を心配しており、善意だけでは動けずに誰かの呼びかけを待っているのです。
(3)行政の反応……制度のみではなかなか充実できないが、制度として取り上げながら進めていく事が必要。地域と言っても、どこを指しているのか分からず、保育園を1個の核ととらえて進めていく事が地域に開く近道と受けとめています。

2.職員の評価・反省・意見
 使命感とボランティア精神で支えているが、園長の理解がなくては実現しない問題が多い。職員も家庭があり子育てをしているのですから。
 事業としては必要であると評価しているが、今の制度では職員の負担は大きくなるばかりです。家族の協力によって職場が成り立っていると言うこともできます。

3.課題と今後の展望
 地域差がありますし、それぞれの家庭の事情があり、悩みもあります。まず子育ての不安を取り除いてあげたいと強く思います。
 保育園の開放については、サービスの一部を自由に利用できるようにするとよいと考えます。予算の関係もあるので難しく、何でも無料という考え方でなく、応分の費用は負担をお願いし、困っている方には特別の配慮ができるようにすべきです。
 地域に開かれた保育園は大変必要な役割であり、少子高齢社会の到来の中で、私達がしっかり取り組まなくてはいけない問題と感じています。地域の核となるためには、私達だけの活動ではなかなか難しいと思います。行政の仕事として制度化し、地域を細分化し(中学校区から小学校区に分け)、それを各種団体や各自治会と手を組み、保育園・幼稚園が協力し合って乳幼児の子育てを支援し、学童となれば学校区単位で考え、そこに地域の方々の協力が得られるように組織を広めていく。各地域には必ずボランティア団体があり、その人達と保育園が積極的に手を組んで活動することができると思います。今の行政は、予算化しその事業を育てていくための地域の人々を活用する仕組みを形式化するだけで終わっています。地域の学識経験者などと称する方達の意見を重視してしまう傾向があり、若い人達の意見が地域では出しにくい現状もあります。
 保育園が中心となり、地域の人々の叡知を集め、関係機関・ボランティア団体等と連携して子育て支援に遭進する時であると考えています。





<< 戻る | 目次へ | 次へ >>