II. 調査研究実施保育園の報告
4 狭山台みつばさ保育園(埼玉県 狭山市)
人口16万人の狭山市は、都心から1時間。東京への通勤可能な所に位置しているため、県外から移り住む人が多く、待機児童も年々増し、平成14年12月現在168名という状況です。市内には、公立9か所、社会福祉法人立7か所の保育所すべてが、定員を上回る児童を受け入れ、市内4か所の一時保育、1か所の短時間保育、乳幼児情報センター、ファミリーサポートセンターが行政を中心として連携をとり、待機児童の解消に努力していますが、受け入れても受け入れても待機児童は減少しないという状況が続いています。
当園は、昭和51年開園当時から長時間保育・産休明け保育・全園児への完全給食等に取り組み、平成5年に一時保育を、平成10年には休日保育をお受けし、地域に開かれた保育所を目指して努力を続けています。地域支援、地域との連携を考慮し、「地域における異年齢児との交流事業」や「卒園児との交流事業」等も行ってきましたが、今回の調査研究のお話をいただき、現在行っているものを膨らませながらより地域に開かれた保育園となるよう職員会議を重ねながら考えていきました。たくさんの方を招くだけでなく、ひとりでも多くの人とふれあい、語り合えるように配慮しながら活動を進めることにしました。
いくつかの事業にポイントをおいて実施することにし、今回は下記の3つの事業に対して改めて見直しを行いながら取り組むことになりました。
1. 保育園開放 (園庭・保育室の開放)
2. 保育園の行事への参加
3. 幼稚園・小中学校との連携
1. 保育園開放 (園庭・保育室の開放)
5月15日 (土)
「ワクワクドキドキ!保育園のおにわ」参加者 15名
6月15日 (土)
「すなばでどろんこ一等賞!」雨のため室内遊びに変更 7名
7月13日 (土)
「プールでちゃぷちゃぷスーイスイ!」 24名
9月7日 (土)
クッキング「パンをつくろう!」 20名
11月16日 (土)
「保育園ってこんなところ」 15名
在宅の子育て家庭に対して、遊び場の提供、遊びの伝承、育児相談等を目的として、保育園開放を行っています。平日の園庭開放が望ましいのですが、150名 (120%) の子どもたちと平均10名の一時保育の子どもたちの遊びを充実させるためには、どうしても在宅の子どもたちに開放するのはむずかしく、土曜日の受け入れが主になっています。他園との違いは、来園者にもあらわれ、在園児の親子であったり、近隣家庭の父子であったり、保育園の見学を兼ねた人たちであったり、人数的にはあまり多くないものの、ほのぼのとした一時を過ごしていただいています。
在園児の家庭においては、朝夕あわただしく、日常のようすはお迎え時の保育者からの報告であったり、連絡ノートが中心となるため「さかあがりができるようになったよ」「ブランコがこげるようになったよ」「新しい車は、こうやってこぐと動くんだよ」等、子どもたちからの園での報告や子どもたちの成長を自分の目で確かめたくて……という保護者の方々や、遊び慣れた園庭で子どもたちを遊ばせながらゆっくりおしゃべりを楽しみたいという母親たちの交流の場、おしゃべりタイムの場であったりします。土曜日は父親が休暇のために父親に子どもを託し、母親は掃除等、家事をこなしたり美容院に出掛けたり等、自分の時間を楽しみ、その間父親は子どもとのふれあいタイムということで散歩がてら保育園に立ち寄り、園庭で遊んだり父親同士のふれあいの場を楽しんだりしてくれています。担当保育士は、子どもたちと遊んだり、保護者に遊び方を伝授したり、来園者たちのようすを伺いながらおしゃべりの輪の中に入ってみたり、ソッと見守ったり、また、おたのしみタイムとしてパネルシアター・エプロンシアター・紙芝居等行っています。
園庭遊びの人気は、大型遊具や大型乗用自動車、砂場。家庭では、なかなか購入がむずかしい玩具も保育園には揃っていて、自由に使って遊べる。砂場等、公園の砂場は不衛生であり、たばこのすいがらやプルトップ等危険な物も交ざっていて安心できないが、保育園の砂場は、衛生的に管理されているので安心できるうえ、玩具を持参しなくてよいので手軽。夏場、家ではお水がもったいないと控えてしまう水あそびも自由にできるのが嬉しい。先生たちが子どもと遊んでくれるので、子どもとの接し方や声掛けの仕方等参考になる、等の声が来園する保護者から寄せられ、最近の保護者の思いを知ることができ、わたしたちにとっても学びの場となります。
クッキングは、栄養士の腕の見せ所。身近にある材料で簡単においしく、親子で楽しく作れて、家に帰ってもまた作りたくなるメニューを考えてくれています。今年は、パン作り (ソーセージパン、アンパンマン、チーズロール、ハムチーズロール) にチャレンジ。
パン生地とソーセージ、チーズ、飴等を用意し、手の洗い方の説明から入りました。アンパンマンのあんこを包んだり、鼻やほほをつけたり、まゆ、め、くちをチョコペンで書く所が子どもたちに人気で、焼き上がっても大切そうに食べずに持って帰りたがる子が多く、ラッピングして留守番の父親へのおみやげとなりました。パン作りは大変と思っていたけれども、思ったよりも簡単で楽しかった。さっそく、家でも作ってみます、という声が聞かれ、参加できなかった人たちからもレシピが欲しいとの希望が入り、さっそく、玄関のスペースにレシピを置くことにしました。クッキングは、職員にも好評で休憩時間等には、職員向けの講習も入り、一時期職員の間でパン作りが流行しました。普段なかなか表にでる機会が少ない栄養士や調理師の陰の努力が、大きく実るひと時です。メニュー選びから材料の準備、試作品作り等事前の準備に加え、衛生面に関しても配慮を必要とするため大変な事も多いのですが、人気も高く地域交流事業にとって欠くことのできないものとなっています。
担当者……
保育園開放 保育士 4名 看護師 1名
クッキング 栄養士 1名 調理師 1名 保育士 2名
2. 保育園の行事への参加
8月31日 (土)
みつばさ子どもなつまつり 卒園児及び地域の子どもたち 148名
10月13日 (日)
みつばさ合同うんどうかい 卒園児及び地域の子どもたち103名
なつまつり・運動会等の行事も地域の人に開放し、参加して共に楽しんでいただくよう誘いかけをしています。過ぎ行く夏を思いきり楽しもうということでなつまつりは、毎年、8月の最後の土曜日に行うこととし、職員の手作りのあたたかさで迎え入れるようにと心掛けています。卒園児も地域の子どもたちも在園児も同じように受付でおたのしみくじを引いてから、いよいよ各コーナーへ。わなげや的当て、ヨーヨー釣り、ペットボトルのボーリング等のゲームコーナー。焼きそば、おだんご等の飲食コーナー。駄菓子やおめん等を集めたおたのしみコーナー。職員の手作りの手芸品やマスコット、フリーマーケットそして、なつまつりの踊り等。子どもたちもおとなも共に楽しめるようにと配慮しました。保育室を2部屋、休憩室として開放し、オムツ交換スペースや授乳スペースも設けゆったりとくつろぎながらすごせるスペースを確保しました。
「は〜とふるぷれぜんとタイム」と称したおたのしみタイムには、毎年職員がそれぞれの得意分野を生かし、工夫を凝らした催し物を行います。今年は、合奏とマジックにコントを組み合わせ披露しました。「自分が楽しくなければ、人を楽しませることはできない」をモットーとして職員一人ひとりが協力し合いながら、手芸や模擬店、ショータイム等、得意分野を発揮しつつ、職員自らも楽しみながら取り組んでいます。
ひとつの目標に向かって協力し合い頑張ることにより、心がひとつになり、団結力も生まれ、各自の個性や新たなる一面を見いだすこともしばしばです。一昨年では、保護者会にも協力をお願いし、模擬店等の出店を担当していただいていたのですが、役員ということで忙しく、思うように子どもたちと楽しめないという事もあり、昨年からは、職員のみで行うようにしました。近隣の家庭に対しても、事前にプログラムを添えて挨拶に回り、なつまつりへのお誘いを行い、卒園児や地域の子どもたちのみならず近隣の大人の方々も多数足を運んで下さっています。当日は、職員用の駐車場を駐輪場として開放すると共に、なつまつりの開催中は、職員および有志の保護者会の役員が時折、近隣を見回り、路上駐車場等で近隣家庭に迷惑が掛からぬようにとの配慮は怠れません。
「みつばさのお祭りが終わると夏ももうおわりだなあ〜」毎年、来園してくださる近隣家庭のお年寄りの言葉に、改めて地域の方とのコミュニケーションの大切さを感じています。
運動会は、小学校の校庭をお借りし、同一法人の保育園と合同で開催するのですが、運動会は、見ているだけでは物足りない。という意見を取り入れ地域の子どもたちが参加できる競技種目、就学前の小さな子どもたちのための親子参加の競技と小中学生のための競技を用意しました。卒園児のみならず、みんなが楽しめるようにとの思いから、小さな子どもたちには、参加した喜びが味わえるように簡単な障害物的な内容のものを、小中学生には思いきり身体を動かせるような少し勝負性のある内容のものを計画しました。運動会やなつまつりは、卒園児のクラス会のような役割も果たしてくれていています。久しぶりに会う友だちとの再会を喜び合うのは、子どもたちのみならず、保護者も同様でおしゃべりの種はいつまでたっても尽きないようです。
担当者……園長はじめ全職員
3. 幼稚園・小中学校との連携
中学校社会体験チャレンジ (スリーディ・チャレンジ)
7月30日 (火) 〜8月1日 (木)
狭山市立堀兼中学校
1年生
4名
8月21日 (水) 〜8月23日 (金)
狭山市立堀兼中学校
1年生
4名
12月4日 (水) 〜12月6日 (金)
狭山市立東中学校
1年生
6名
小学校福祉体験
12月9日 (月) 〜12月11日(水)
狭山台北小学校
6年生
5名
12月12日 (木) 〜12月14日 (土)
狭山台北小学校
6年生
5名
北小まつりへの参加
11月12日 (火)
年長児
24名
年中児
25名
各関係機関との連携、ネットワークの重要性が問われている昨今、埼玉県においても幼稚園や小中学校との交流が増えてきました。県としては、幼稚園教育研究会の研修に保育園関係者の参加が認められ、共に学ぶ機会が設けられ幼稚園教育要領について学んだり、事例研究を発表し合う等新たな取り組みが開始されました。当市においては、幼稚園との交流について消防署が母体となり、市内の幼稚園公立8園、法人立3園、保育所公立8園、法人立7園が参加し、狭山市幼年消防クラブを結成。春秋の火災予防週間及び入間川の七夕まつりに防災予防パレードを行ったり、各園独自で近隣を回り、防災を呼びかけています。
小学校においては、当園に隣接する狭山台小学校の学校行事のひとつ「北小まつり」に年中・年長児が招待を受け、校庭中に広げられたゲームやうらないコーナー、お店屋さん等で自由に遊び楽しいひと時を過ごしました。北小まつりは、異年齢交流を目的とし、各学年縦割りでなかよしグループを作り、それぞれ各グループ毎に計画準備を行っているとのことでした。会場では、卒園児の小学生を中心に園児のお世話係をかって出てくれました。また、園児のために特別ルールを作ってくれたり、ゲームで思うような品がもらえなかったときは、「特別だよ」と言いながら1〜2等の景品をそっと袋にいれてくれたりしました。「みんな同じじゃなくちゃ、かわいそうだからね」の言葉に小学生の小さな心にしっかり根付いている優しさ、心くばりに感激させられました。
保育園側からのなつまつりや運動会への招待、小学校からの北小まつりへの招待等を通して、子どもたちはもとより、職員同士の距離も縮まり、散歩等で小学校のそばを通りかかると小学生が声を掛けてくれたり、手を振ってくれたりするようになりました。そんなようすは、そばで見ていてもほほえましい限りです。
担当者……保育士 5名
小学校6年生、中学校1年生の社会体験等、小中学生の乳幼児とのふれあい事業もここ数年積極的に取り組まれるようになり、当園にも数多くの子どもたちが体験におとずれました。事前打ち合わせで、持ち物、気をつけて欲しいこと、経験して欲しいこと等を話し合い質問等も受けました。皆、真剣にメモを取り、その子なりに目的を持って参加してくれました。幼稚園出身の子どもたちが多く、「保育園という所がどのような所なのかよくわからないので、保育園のことを知りたくて保育園を選びました」という声も聞かれました。最初は、緊張のためあまり感情を表に出さず、子どもたちがそばに行ってもどうしていいのかわからないというような小中学生も、体験期間中子どもたちと触れ合ったり、保育者と子どもたちとのかかわりあいや、保護者との対応等に接し、終了時のミーティングでの「こんなに大事にしてもらっているとは思わなかった」「保育士さんて、大変だけれどもやり甲斐のある仕事だと思った」との感想は担当した職員にとってなによりの一言でした。体験後も、保育園の一日を紙芝居にして届けてくれたり、なつまつりや運動会、クリスマス会にも来園し、「先生、何か手伝います」と気軽に声を掛けてくれ、職員を感激させてくれました。ほんの数日の体験でも小中学生の心に残った物は、大きな意味のある事だったように思います。
担当者……保育士 4名
4. 考察と展望
地域に開かれた保育園ということで、各園それぞれ特色を生かして取り組み始めた時に起きた事件により危機管理が問われ、低くなった垣根をより一層高くしなければならなくなり、当園においても園庭側の門のカギを掛けたり、テレビモニターをつけたり等対策に努めてきました。そのような中でも試行錯誤しながら、再び地域支援へと歩みだし、できるところから取り組んでいくことになりました。職員一人ひとりが、自らの保育を見直し、自己を振り返ることからはじめ、それぞれが得意分野を発揮しつつ、お互いを思いやり、助け合っていくことの大切さを認識しました。
地域支援に必要なものは、まず受け入れ、受容すること。聞き上手になること。受容していくには、かなり忍耐も必要になることかと思いますが、相手の立場に立って考えることによって今まで見えなかったことも見えてくることでしょう。いつの時も目くばり、気配り、心くばりを忘れずにいたいと思います。
埼玉県では、「彩の国5つのふれあい運動」のひとつとして、「中学生社会体験チャレンジ事業」が上げられています。5つのふれあいは、「自然」「人」「本」「家族」「地域」で、豊かな心の育成をめざす県民運動として展開されています。地域の子育て支援の担い手として、これからますます保育園に寄せられる期待は高まってくることと思います。一人ひとりがしっかりとこのことを認識し、自己の研鑽に努めながら、地域に開かれた保育園となるよう地域との連携を深め、明日に向かってまっすぐに伸びていく子どもたちのためにも、まず職員自らが光り輝いていきたいと思います。
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