III. まとめ−評価と考察
6. 渋谷一美研究員による評価と考察
地域福祉を考えた時、保育所は大きな役割を担うと言われています。保育所における子育て支援は、保育所の持っているノウハウを提供する場であり情報の発信源でもあります。現在、狭山市においては待機児童が多く、公立9か所・社会福祉法人立7か所の保育所全てが定員を上回る児童を受け入れ、市内4か所の法人立保育園が一時保育を1か所の保育園が短時間保育を行っており、その他福祉公社でのファミリーサポートセンター、行政での乳幼児情報センターに加え、各児童館や公民館での育児サークル等行政を中心に連携をとり、地域への子育て支援を行っています。
在宅の子育て家庭に対する支援の一環として児童館や公民館でのサークル活動や乳幼児情報センターでの遊びの提供。園庭・室内開放等についても、公私立の保育所で積極的に行っている中、土・日曜日のみ園庭・室内開放を行っている保育所の場合は、通常とは少し異なるふれあいの場であるのではと思います。育児サークルに加入している人たちの中には、数か所の育児サークルに加入し、曜日によって「今日はここ、明日はどこどこ……」というように利用している人も少なくなく、「いつきてもいいよ、いつまでいてもいいよ」と子育て中の母親にとって、息抜きの場となっている乳幼児情報センター等、先進的に事業を展開している中においても、人との付き合いが苦手で人の輪の中に入っていくことができず、話し相手や相談相手もなく、昼間、子どもと部屋の中にこもり、孤独な子育てをしている母親にとって通常の時間帯とは異なり、ゆっくりと穏やかな時間の流れの中で、人の目を気にせず、子どもを遊ばせたり、子どもの面倒をみてもらいながら自分の思いを誰かに聞いてほしいと思っている、みんなの輪の中に入っていけない人たちの場でもあるようです。そのため、誰もが気軽に門をくぐれるように保育所の垣根を低くしておく必要があります。
地域に開かれた保育所として、各保育所がそれぞれ特色を生かして、危機管理の問われる中、試行錯誤しながらできるところから取り組んでいる地域支援。中でも、園庭開放は、保育所を知ってもらうためのよい機会でもあるのです。保育所の行事への誘いも同様で近隣家庭の人々や卒園児等と在籍児童・職員との交流の場となり、保育所を身近に感じてもらう機会となっています。
地域への子育て支援は、担当職員だけでは対応できないため職員間の協力体制、共通理解が重要なポイントとなります。一つひとつの事業が職員の協力なくしては成り立たないものであり、無理があったり、職員の中での理解が得られないなかでの実施は、むずかしくなります。
園庭・保育所開放においても、開放日は在籍児童は園庭を使用せず、散歩に出掛けたり、室内での活動を行い、地域の子どもたちのために園庭を開放するという実状も耳にすることがあり、職員の中には疑問を持つこともあるとのことですが、視点を変えて物事を考えていくことにより、方向性も見え職員の意識も変化していくことと思います。
地域支援には、受け入れ、受容すること。聞き上手になること。が大切な要因となります。受容していくにはかなりの忍耐も必要になり、相手の立場に立った物の考え方が求められてきます。子育て支援は、全職員で関わっていくため職員の心に余裕がないと受け入れられないことも多い事でしょう。特別事業や定員を越えての入所児童の受け入れ等多様な保育ニーズに対応している中、一人ひとりを大切にする保育として、取り組まれている乳児保育を例にとれば、担当制保育を取り入れていても一人で一人を見ればよいのではなく、一人で全ての子を見ることに変わりはないのです。職員も心身ともに健康でなければ、よい保育はできません。
きれいな花を見てきれいと感じる余裕がなければ、人にその花の美しさを伝えられないのと同じように、子どもたちと過ごす楽しさを心から感じていなければ、保護者にその楽しさを伝えられないと共に、相談にものることができない事でしょう。保育所職員は力量と共に心の余裕、豊かな愛情を求められ専門性のみならず、人間性をも要求されてきています。
地域支援の事業は、継続性が求められます。地域の人々からの期待が大きいため途中でやめることはできません。予算削減の現状の中で多様な支援が求められるため、手作りの暖かさ、工夫、アイデアの時代を迎え、より一層の配慮を必要としています。そのため、自己満足であってはならず、よかれと思って行ってきたことが実は押し付けであったり、配慮にかけていたりすることも少なくないことでしょう。一歩離れた所から見つめることで見えないものが見えてくることが多々あり、気配り、心配り、目配りの大切さを改めて感じます。
移り行く時代の中で保育所に求められる要素も多様化し、児童福祉法の中に定義づけられた保護者への相談援助。在籍児童の保護者に対する保育園ならではの相談は、子どもの日常を知り得ている職員だからこそでき得るものであり、配慮を必要とする児童や保護者が増えている中で、一人ひとりの違いを認めつつ、その保護者にあった対応をしていくことが大切なのではないでしょうか。どんなときにも子どもとの信頼関係が成り立っていれば保護者も変わってくることでしょう。保護者の声はたとえ、クレームであっても保育所や職員を成長させ、よき方向に導いてくれるアドバイスとして受け止めるべきかと思います。常に相手の立場に立って物事を考えることの大切さ、そして自らの保育を見直していく機会を与えてくれているのだと思います。職員も一人の人間であり完壁な人格は持ち得ていません。弱い部分を持っていたり、挫折を味わったりした人ほど人の心の痛みが分かり、悩みを持つ保護者に共感できることでしょう。悩みを抱えている保護者にとって自分の悩みを受け入れてくれる人、共に涙してくれる人にこそ心の底を打ち明けてくれるのだと思います。アドバイスや励ましよりも相談を受けた人の共感や失敗談等、自分の話をしっかりと聞き、受け止めてくれたという安心感が何よりも心の安らぎへと通じることでしょう。悩みを持つ保護者は自分の弱さを十分に知り得ている場合もあり、誰かが少し背中を押してあげることによって目の前の扉を開いていけることでしょう。
今、最も需要の多い一時保育においてはリフレッシュや育児不安の人たちの受け入れも可能となっているものの、受け入れ枠に余裕がなく受け入れがままならない現状です。もっとたくさんの施設で取り組むべき課題だと思います。待機児童が多いため、一時保育の利用希望が多く、週3日就労のための利用家庭においては、年間を通しての予約が難しいという問題がありましたが、国の新しい施策として、特定保育事業が制定され、多くの期待が寄せられていることと思います。これからは育児に悩み、不安を抱え本当に保育を必要としている家庭の受け入れも容易となってくる事でしょう。わずかな時間でも、育児を離れリフレッシュする事により、育児に対する希望を持つことができるのであれば、保育に携わる者として何よりの事と思います。
待機児童に関する自治体のアンケートにおいて、休日保育の必要性もうたわれていますが、実際に利用する人があまり多くなく、仕事を見つけるうえで休日保育があると安心、仕事の枠が広がるという一つの選択肢として出されているのではないでしょうか。本当に休日保育を利用する人にとっては、土曜日の延長保育の必要性がうたわれています。日祭日は一般的には休日であっても、休日保育を利用する家庭にとっては平日であり、土曜日も通常勤務なのです。土曜日通常勤務の家庭にとって在籍する保育所の開所時間次第では、土曜日は他の人に預けたり、ファミリーサポートを利用したり等、二重保育の必要性が大きな課題となっていることと思います。休日保育の利用料負担金についても、通常の保育料とは別枠となるため家庭における負担は大きくなっており、今後の制度上での検討が待たれる事と思います。
埼玉県では「彩の国5つのふれあい運動」のひとつとして「中学生社会体験チャレンジ事業」があげられています。保育所、幼稚園、小学校、中学校の連携を考慮し、数年前から取り組まれている事業ですが、乳幼児をお預かりする保育所にとって保菌検査の必要が生じており、中学校にとっては予算化されていないという現状があるため思案されていたのですが、このたびの「次世代育成支援対策推進法案」により中高校生と乳幼児とのふれあい事業が、予算化されたことにより学校側に負担をかける事なく受け入れが可能になり、これからますますの交流が期待される事となりました。
保育園行事への招待、小学校行事への参加等の相互交流に加え、職員側の連携としても入学前の保育所職員の授業参観への出席や小学校教諭による保育参観が、行われるようになり子どもたちの姿にじかに触れる事ができ、在籍児童の個人的な情報をより正確に伝える事ができるようになりました。
保育所に期待が寄せられている今だからこそ、保育所に在籍する児童とその家庭を含めた子育て家庭のみならず、在宅の子育て家庭への支援に力を注ぎ、孤立した子育てにならないよう保育所を中心に地域で見守り、未来を担う子どもたちのためにも「今」を大切にしてあげたいと思います。そのためにも、地域に開かれた保育所となるために地域で必要とされている課題は何かを見極め、各関係機関との連携を深めつつ、一つひとつ丁寧に対応をしていきたいと思います。
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